« 入院中の思い出話  (ブレイクスルー) | トップページ | 入院中の思い出話  (お誘い&退院) »

入院中の思い出話  (さらなる観察及び病院社会)

 結局、入院中の平均睡眠時間は四時間だったのだが、何かが吹っ切れた私は、多少、寝不足気味でも動く。点滴の針は全て抜かれ、食事療法になっていたため、自由度が拡がった。前日に引き続き読書にしようかとも考えたが、今まで以上に動き回って、先生と看護師、スタッフ、患者からなる病棟社会をじっくり観察することに決めた。退院まであと二日。同部屋の方とのコミュニケーションは勿論、デイルームに行ったりなどして、流れを観ていた。流れの中に身を置くと気付かされることが多い。いつも風景の一部でしかなかった、身寄りの無いお年寄りや面会人のいない人達がリアルに感じられた。いつしか私はそういう方々の話を聞き、ふれあいを持つようになっていった。いろんな方がいろんな悩みを抱えていることに気付かされる。中には主治医さえ信用できないと言う方もいた。それでも辛抱強く、その人の目線で聞いていると、本音で語ってくれる。私はその人の心のコリをほぐすだけだ。余計なことはしないし、邪魔だと察知したら立ち去る。そんな私の様子を観ていた同部屋のタナさんが、私に話しかけてくれた。私はアルコール性急性膵炎、タナさんは肝硬変。決定的に異なるのは、タナさんはお酒を全然飲まないのに、先天的なもので肝硬変になったそうだ。何だか矛盾している中、タナさんは私にお酒を控えるようにやさしく語りかけてくれた。これは効いた。また、同部屋でも、ほとんどの方は早期退院できそうだったが、隣のカワさんだけが、長引きそうだった。毎晩、仕事帰りに母親らしき人がやって来ているのも知っていた。私は退院が近いので、売店に行く振りをして、その方に話しかけた。すると、母親だと思っていたその人は、カワさんの奥さんだった。一階のベンチでカワさんの病名を知った。肝臓がんである。子供の頃に受けた手術での輸血により、C型肝炎にかかり、元気だったものの、三十の後半で肝硬変、現在、肝臓がんになり治療中とのこと。気の毒に思ったのは言うまでもない。カワさんも奥さんも。疲れた顔をしている奥さんを病院出口まで見送り、私と会ったことはカワさんには内緒にしてもらうことにして、病室に戻ると、私はカワさんに掛ける言葉を独りで模索。退院の時に同部屋の他の方に掛ける言葉は、全部、整っていたのだが、がんとなると、難しい。ふと、故親父のがんの時の闘病生活の時に紹介した本を思い出し、手帳にメモった。二度のがんに打ち勝った、碁打ちの故藤沢秀行名誉棋聖の本である。宜しければ読んで下さいと書き、退院の時に手渡すことに決めた。時計は深夜の零時近く。短いblogを書いて寝た。翌日の血液検査の結果が良ければ、二日後には退院である。

|

« 入院中の思い出話  (ブレイクスルー) | トップページ | 入院中の思い出話  (お誘い&退院) »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521582/61884357

この記事へのトラックバック一覧です: 入院中の思い出話  (さらなる観察及び病院社会):

« 入院中の思い出話  (ブレイクスルー) | トップページ | 入院中の思い出話  (お誘い&退院) »