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古典のまっちゃん

 母校からの手紙が届いた。どうせ募金だろうと思いながらも封を開ける。やっぱりそうだったが、母校の実績は伸びている。嬉しい限りだ。英語の恩師の名前もあった。数学塾から終電で帰り、家に着くと眠い目をこすりながら辞書を引き引き予習していった日々が思い出される。高三の時のことだ。家で寝るのは三時間ぐらい。下らない授業の時には容赦なく寝ていた。書簡を読んでいると、もうすぐ創立100周年らしい。私達の時にも70周年誌を無理矢理に買わされた。久々にその本を開けてみると、私が高二の時の懐かしい先生方の集合写真を見付ける。コイツとコイツとコイツはデクで、などと考えているうちに、懐かしい顔を見付けた。古典のまっちゃんである。早稲田かどっかを出たはずだが、一浪して代ゼミから入ったはずだ。普通、新しい先生が中高一貫の高校のクラスの授業を受け持つというのは、卒業生で無い限り、相当な覚悟がいる。ナメられてしまうのだ。明らかに反抗する生徒もいたが、大概は眠ってしまうのである。まっちゃんが担当した我がクラスもそうであった。あるとき、古典の法則を教える時に、歌で教えるのが一番早い、と口をすべらした。みんなから、歌え!コールの中、まっちゃんは歌った。半分馬鹿にした拍手と歓声で盛り上がった。しかし、それから、まっちゃんの事をナメる生徒はいなくなった。私は関心を持って、まっちゃんの授業を真面目にノートにとりだした。すると、案外面白い。源氏や平家、大鏡、増鏡、その他などをやってくれた。私は、古典の活用形は覚えないのだが、自分なりに解釈した。試験前夜も丸暗記などせず、ノートをパラパラめくっただけだった。試験は授業でやった所からしか出ていなかった。楽勝だった感触があったが、暗記していたわけではないので、当然、アドリブで訳した。それでも93点を取れたとき、まっちゃんは、答案を返す際、「お前、凄いな」と洩らした。『?』だったが、私の答案は他の生徒と異なり、明らかに間違っている所だけが減点されていた。自分なりの訳なので、多分教師泣かせだったのだろうと教える立場になって想像がついた。そんなまっちゃんだったが、何故か一年で辞めてしまった。私としては残念だったが、あの歌声と、黒縁眼鏡と、下手くそがいじったような髪だけは覚えている。愛嬌のある笑顔が忘れられない。お元気だろうか。

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