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竹馬の友  その7

 二軒目の店は、客が一人もいない、世界中のビールを扱っているような店だった。私と彼は窓側の二人席に座り、私はドイツの黒ビールを頼んだ。そして、早速、私が、「いやなあ、こないだのカーナビが壊れた独り旅、そこでもいろいろ考えさせられたけれど、俺は、人間好きなのに、どうしても組織の一員として働くのは無理なんだ。だから、物書きやっているけれど、旅の途中で、『十三歳のハローワーク』を読んでみようかと思ったよ」と笑って話すと、彼は、「一人で出来る仕事なんていっぱいあるぞ。それに、あの本、実は名著なんだよ」と言うので、「確かに村上ロンは、いい所に目を付けたよな。お財布を握る御母様達が買っちまうような仕組みが出来ているんだ。戦法はアンパンマンと大差ねえんだけれど」とまでで、「よく解っているじゃあねえか」と彼が頷く。私は、「四国でな、遍路をしている奴は一杯いたんだけれど、托鉢だけで遍路を続けて、四国を終の棲家としている、四、五十人のうちの一人と、俺、奇跡的に出会っちまったんだよな。その人は八年目らしいけれど、話が聞きたくなった俺は、思い切って壱万円入れて、その人と話す時間を買ったんだ」とまで語ると、「それって凄い引きだなあ」と、彼が乗ってきた。「四時間位話したんだけれど、その人は宗教心と、便利さを捨てることこそ、人間らしい生き方だというポリシーの基にそうしていて、俺の場合は、実は、書く事そのものでは無く、いろんな事を考えて、相似論法みたいなアナロジーの中に、自分なりのモデルを作ることが好きなんだということが解ったんだよな。それって、文学というよりも哲学に近いってことが解ったんだ。足摺岬から東に二つ目ぐらいの道の駅での出会いだったんだけれど、なんか、俺、この人と会うために四国に来たんじゃあないのか?って気がしだして、そこからは高速に乗って、一路家を目指して返ったんだよな。途中で一泊したけれどもね。これは偶然では無くて必然だって思い込んじまったんだ。決してナビが壊れたから、帰って来たわけではないんだよな」と一気に話すと、「おまえらしいな」と黙って頷きながら、彼も面白いことを話し出してくれた。

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