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夢を語る少年 その3

 私の腹をどついても、所詮中学生、何ともないのだが、本当に気持ちをぶつけてくれているのに塾の一番奥のロッカールームで嗚咽した生徒を前に何も言えなかったことは忘れてはいない。『俺は何て無力なんだろう』と感じた・・・しばらくするとテツが泣きやんだ。ハンカチを貸してやった。テツも落ち着きつきつつあった。そして、私をどついた事を詫び、静かにこう語った。「学歴が大切なのは解ってる。でも、どうして、お金とか、頭のいい悪いで、人生を決められてしまうの?」と。私は即座に、「いっつも宿題をやってこないくせに生意気言うな。人の頭の構造なんて解らない。個人差があるのは解る。でも、本当に、お前、努力したのか?野口英世の言葉だけれど、人の3倍4倍5倍努力してからそういう事は言ってみろ。お前の悔しさは誰もが通る道なんだよ。もっと、自分の悪い所を治して、いい所を探してもいいんじゃあ無いのか?」と聞いた。気が付いたら、二人っきりのロッカールームで窓際の壁に寄り添いながら二人して座っていた。沈黙の時間が少しだけあってから、テツが話し出した。「俺、困っている人の力になりたいんだよね。だから、将来はカウンセラーになりたいと思っているんだ・・・自分も散々苦しんできたし・・・」と。私は驚いた。普通の中学生がこんな考え方を持っているだろうか、ということにだ。私はしばらく考え、「立派な考え方だと思う。テツにそんな野望があったとは知らなかったよ。でも、最低限の勉強はしておいた方がいいよ。勉強が面倒なのは解る。でもそれくらい乗り越えなきゃあいけない世の中なんだ・・・最後にね、俺の友達の奥さんで、アメリカでカウンセリングの勉強をしていた人がいる。みんなで集まったんだけれど、優秀なカウンセラーになるためには、何が必要か解るかい?それが今日の宿題だ」と言って、顔を洗わせてから、みんなの所へ戻った。

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