« アリとキリギリスについて | トップページ | 花瓶一つで »

読書論

 先日、母が「武士道って何なの?」と聞いてきたので、黙って、新渡戸稲造の『武士道』を渡した。すると、何日経っても、読み終わらない。理由を尋ねてみると、「さくいんが多すぎるのと、仮名遣いが難しくて、とても読めない」と言ってきた。母は、大江健三郎氏の作品と、小林秀雄氏の作品が、この世で最も難しいと思っている人でもあった。確かに、両氏の作品は、読むのに疲れることは事実なのであるが、私は、例えば、ということで、小林秀雄氏の作品と対話集とを持って行った。黙って二ページずつ読んでもらった。そして感想を聞いた。母は、「対話集の方が解りやすい(実はこれは、小林秀雄氏にはタブーなのであるが・・・)」と言った。また、文体についても、森鴎外を持ってきて、「『武士道』とどっちが難しい?」と聞いてみたら、「鴎外の方が難しいんだねえ」と切り返してきた。

 私は、「読書百編って言うでしょ。最初は、さくいんなんか飛ばして読んでみて、全体像を掴んでから、何度も何度も読み返してごらん」とアドバイスして、自分の部屋に消えた。すると、半月くらい止まっていたのに、「五時間で読破したよ。面白いねえ」などと言うので、「何にも解っちゃあいない。あと二回は熟読すべし」と言った後で、「まあ、よく頑張ったじゃない。多分、読書レベルが上がっただろうから、最初に挫折した、般若心経についての本だって何とか読めると思うよ」と話した。

 難しい本と戦わなければ、なかなか良書には出逢えない。単純で、分かり易い本には悪書が多いのである。

|

« アリとキリギリスについて | トップページ | 花瓶一つで »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521582/53969852

この記事へのトラックバック一覧です: 読書論:

« アリとキリギリスについて | トップページ | 花瓶一つで »