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不東について

 大学時代の一般教養では、誰もが楽勝科目を採りたがっていた。四年間で四つ、計16単位を取らなければならなかった。その当時、他ならぬ私も、天文学以外は、楽勝なものを選んでいた。そんな中で、試験でキーワードを書けば単位が来る、美術の授業があった。美術と言っても、絵を描くわけではなく講義である。内容は、一度も出た事がなかったので知らない。ただ、試験の時のキーワードは『不東』だった。当時の私には意味が分からなかったが、とりあえず答案用紙にめいっぱいに『不東』と書いた。

 それからずっと、そのキーワードからは遠ざかっていたが、大学院をやめた後、旅先で知ったのか、仏教の勉強で知ったのかは記憶にないが、『不東』とは、三蔵法師の天竺に向かう際の覚悟の言葉であると知った。当時の中国では、国外に出る事が禁止されており、しかも命がけの旅であった。玄奘三蔵も、旅立つ前に、占い師に占ってもらう程、旅だつのを悩んだらしい。それでも、本格的な仏教の勉強をしたいという情熱の炎が燃え立つのを抑えられず、無理矢理旅立つ。その時、西の天竺に向かうのに、一歩たりとも東には戻らないという覚悟を表したのが『不東』である。転じて、『真理を求めあくまでも追求する努力を惜しまぬ心』という意味になった。

 玄奘三蔵は無事天竺に着き、必死で仏教の勉強をして、祖国に戻り、その教えの翻訳に取り組んだ。その頃には、皇帝も変わっていて、国禁の罪を免除されていたのである。三蔵法師と言えば『西遊記』だが、日本でも薬師寺が三蔵法師を祀っている。『不東』という概念の確認のために、広辞苑の第四版を観たが、載っていなかった。不思議だ。

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