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黒板消し落としの思い出

 小学校五年の時の担任の先生は、女の先生であった。どんな先生か解らなかったが、挨拶代わりに、黒板消しを教室のドアの一番高いところに挟んで、ひっかかるか、クラスの生徒全員が観ていた。しかし先生はすぐに見抜き、「私に黒板消しを落とすなんて十年早い」と、余裕でかわされてしまった。みんながっかりしたが、黒板消し落としを仕掛けても、怒りもせず、ユーモアのある先生だということは、解った。一方で、生徒達は、こうなったら、意地でもあの先生の頭に黒板消しを落とそうと、夢中になって考え出した。

 一度目失敗したから、先生も用心して来るだろうと、見つけられた原因究明を行った。私が、「黒板消しを、普通にドアに挟んだから、廊下から見えたんじゃないだろうか」と言うと、誰かが、「じゃあ、廊下から見えない様に、偏った挟み方をしてみよう」と言って、二度目のトラップを張った。今度はひっかるかなと、クラス中が期待して観ていたら、なんと先生は、教室のベランダから、懲りない連中ね、という様な笑みの中、クラスに入ってきた。またも見抜かれてしまったのだ。私はなんとしても、黒板消しを先生の頭に落としたくなった。こうなったら、もう、知恵比べである。

 扉が開いていたら見抜かれる、と悟った私達は、ドアの脇にあるホワイトボードを利用する事にした。黒板消しをホワイトボードに挟みながら、ドアが開くと摩擦で落ちるという方法を選択した。成功率は50%位だったが、実験してみた後で、私が黒板消しをセットした。間もなく先生が来る段になってクラス中が見守る中、ドアを開けた先生の頭に、黒板消しが見事にヒットした。クラス中が、ワーッと喜ぶ中、先生は、「私が黒板消し落としを受けたのはこれが初めてです」と言って、怒りもせずに、『やられた』という顔をされていた。黒板消し落としはそれっきりでやめた。子供なりに、それが暗黙のルールだろうと思っていたからである。

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