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球形の碁盤

 まだ酒の味も知らぬ浪人時代、宅浪だった私は、気分転換に、しょっちゅう親父と碁を打っていた。その頃はしらふで打っていたし、並べ直しもできた。それでも、いつも負けるので、反省しきりだった。こういう時は、寝る前にまぶたを閉じると、勝負所での白と黒の変化図がある程度まで浮かぶので、厄介でもあった。勉強するために、浪人したのに、碁の石が嫌でも頭の中で並んでしまい、寝不足に陥った。最終的に、私は、寝る前にだけ、親父のビールを二本ほど拝借して、飲むことにしていた。その代わり、普段は起きている間中、勉強していた。もっとも、当時から十二時間は寝ていたが。

 親父との勝負の際、碁盤について疑問に思ったことがある。何故、スミとかヘンが有利にならなければならないかということだった。そこに違和感を感じた。そうこう考えているうちに、球形の碁盤ならば、解決できるのではないかと考えついた。しかしそれでも、特異点がある。北極点と南極点の二点だ。そこから打つ以上、『偏り』はさけられない。当時、親父にこの話をすると、「アイデアが奇抜で面白い。碁を打っている奴で、お前みたいな事を考えている奴は、多分いないだろうよ」と言われた。そして、二人で、もしも、偏りのない球形の碁盤ができたら、という話をした。結論は、「ややこしくなるな」で一致した。

 話は多少変わるが、何年か前に、ベンゼン環ならぬ、サッカーボール状の炭素原子の配列を発見したということで、どこかの国の人がノーベル賞をもらったと聞いた。友人はそのニュースに、「たかがそれだけのことでノーベル賞かよ」と嘆いていたが、私はそういう碁盤について考えていた。しかし、余りにも、石を打つところが少なすぎる。これだけで、私は、友人とは異なる、ため息をついた。球を平面にすると、どこかで矛盾が起きることは周知の事実だ。でも、亡き親父が、「面白いアイデアだ」と言ってくれたことは、今でも鮮明に覚えている。

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