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新聞の集金のおばさん

 小学生の頃、母が新聞の集金のおばさんと話しているのを観ていたら、おばさんは、私と弟に、「大きくなったわね~」と言って可愛がってくれた。小さいときの記憶がない私は、怪訝に思ったが、後で母に聞くと、私が赤ん坊の頃からの付き合いらしいことが解った。

 そのおばさんは、雨にも耐えて、風にも耐えて、夏の日照りにも耐えて集金をやっていた。いつしか私も、気兼ねなくおばさんと会話したりしていた。おばさんはいつもニコニコしていた。

 それから十数年、今から十年前ぐらいであろうか、新聞の集金員が変わった。若いおばさんが集金に来た。お金を払いながら、「前の方どうなったんですか?」と聞いたら、「死にました」と言う。僕は驚いて家の中に戻り、そのおばさんに、「お線香代にして下さい」と言って、千円渡した。おばちゃんが亡くなったことがショックだった。

 数日後、家のチャイムが鳴るので母が出て行くと、千円渡したおばさんがいた。事情を尋ねると、その方は、亡くなったおばさんの娘さんだったらしい。山梨出身だったか、葡萄をくれた。そして、こないだのこと(僕が線香代を渡したこと)が限りなく嬉しかったと言って、泣いておられた。「お袋さんの仕事が認められて嬉しかった」とその人は言っていた。まさか娘さんだとは思わなかったので、びっくりしたが、亡くなったおばさんに一つ恩返しができたようで、その日はしみじみとしていた。

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