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パンジー

 しばらく前、母親の買い物の足となって、ホームセンターに行った。待ち時間に、表に置いてある花をぼんやり観ていた。シクラメンとかサザンクロスとかいろいろとある中で、パンジーが目に止まった。私はあることを思い出していた。

 私と弟が物心ついた頃、我が家では玄関の下駄箱の上に水槽を置いて、熱帯魚を飼っていた。父が飼っていたのだが、ネオンテトラとかゼブラダニオとか、一般的な魚が飼われていた。空気を送るポンプとか、サーモスタットとかが懐かしい。

 ある時、父が熱帯魚屋に行くというので、我々兄弟も同行した。バランスよく熱帯魚を買っている父に、私と弟はそれぞれ一匹ずつ、欲しい魚を提案した。一匹は尾の長い赤色の魚で、もう片方はオレンジに黒の柄の熱帯魚だった。父は買ってくれた。

 尻尾の長い赤い方はまもなく死んでしまった。しかし、オレンジに黒の柄の方は、頑張って長生きした。いつしか、私と弟は、その魚を『パンジー』と呼ぶようになった。餌をやるときに、水槽の片隅から入れてやるのだが、その際、トントントンと叩いてやっていたら、餌がないときでも、叩いたら熱帯魚が寄ってくるようになった。条件反射である。

 ある日、パンジーがいなくなった、と思ったら死んでいた。ショックだったが、私と弟はアイスキャンデーのスティックを墓標にして、庭に埋めてやった。パンジーの墓である。弟と私は、その墓標に向かって、しばらく手を合わせていた。

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