« 父の思い | トップページ | 報われない仕事 »

ケーキにつられて

 小学校四年生の時、お袋が、ある塾の入塾テストを受けたら、好きなケーキを買ってくれると言った。テストぐらいならいいだろうと思って、僕はあるケーキを選んだ。そのケーキ、確か700円だった記憶があるが、味は覚えていない。僕は入塾テストを受けた。

 テストされるのは国語と算数で、問題用紙と解答用紙が配られた後に、立ち会いの試験官が、「どんな質問にも応じない」と言って始まった。すると、私を悩ませることが起きた。国語の漢字の読解の問題で、印刷が悪くて何が書いてあるのか解らなかったのだ。さんざん迷った挙げ句に、黙って手を挙げ、試験官に「(印刷が悪くて)読めません」と問題用紙を指さした。試験官も納得したらしく、黒板に漢字を書いてくれた。これで一件落着だったのだが、ケーキのために頑張った。その頃の私は漢字が苦手だったが、読めた。

 それから一年間、その塾にお世話になるのだが、私は一回も予習復習をしなかった。当然、テストの点も悪い。二クラスあるうちの下の方に入れられた。しかし、まもなく転機が来た。私が通っている教室だけでなく、全ての教室で一斉に実力テストが行われた。私は定期テストが悪くても、実力テストは得意である。今でも覚えているが、全体で21位、その教室では5位だった。塾の対応も代わり、私はすぐに上のクラスに入れられた。他の習い事もしていたが、塾側から、私を熱心に期待している旨を告げられて、全部辞めた。この実力考査の結果は母にもインパクトを与えたらしい。私に期待してしまったのだ。それからというもの、何かあると「勉強しなさい」と言われるようになった。700円のケーキでは割が合わないとも感じるが、世間一般の母親なんてそんなものかも知れない。

|

« 父の思い | トップページ | 報われない仕事 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521582/54006532

この記事へのトラックバック一覧です: ケーキにつられて:

« 父の思い | トップページ | 報われない仕事 »