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毎週寿司を出されて

 大学四年の時だったと思う。近所で家庭教師をしていた。教えていたのは、私立に通う中学生の男の子。英語と数学を教えていた。時間は合わせて三時間だったが、中休みを取っていたので、時給とは関係なしに、毎回、延長していた。その子は能力がないわけではないが、試験前などにならないと、なかなかやる気を見せてくれなかった。教えた当初は、丁度、試験前で、数学では因数分解を教えていた記憶がある。因数分解のコツは、まず、共通因数をくくりだしてから、掛け算と足し算のバランスをつかむことにある事を教えた。とりあえず、その直後の試験で点数を伸ばしてくれたからホッとした。

 教える時間が土曜日の夜ということもあって、毎回、私は夕食を採ってから出かけていた。初回の中休みに、寿司が出てきた。私は驚いたのだが、教え子は無邪気に食べている。私も気合いで食べた。初回だからだろうと思っていたら、毎週寿司が出てくる・・・ただでさえ家庭教師を雇うのには、お金がかかるのに、と思った私は、まもなく、「たかが家庭教師に、寿司なんて贅沢です。何か出していただけるなら、お茶菓子ぐらいで結構です」と親御さんに言った。これぐらいの配慮は当たり前のことである。

 いつもスクーターか車で通っていたのだが、雪が降った日があり、そのとき、私は歩いていった。その頃には、教え子は勉強を教えても、まるっきり頭に入っていない様子だったので、私は方針を変えて、勉強は最低限教えるに留め、本を紹介したり、作文を書かせて、今の時代に必要な、「考える力」を定着させることに重きを置いていた。・・・その雪の日の帰り、親御さんが「ガソリンを入れに行くから」と言って、私を送ってくださった。甘える気はなかったが、気を遣っていただいたことには感謝している。そうして、私が車を降りようとした際、運転席の親父さんから質問された。「うちの子はどうでしょう?」・・・少し迷った私は、「結果は付いてくるものですから」と返事した。どんなに才能があっても、努力する気合いがなければ、何事も、ものにならないのである。複雑な心境だった。

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