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ドンピン

 もう八、九年ぐらい前のことになるが、私の親父が癌になり、再発したときに、治療に専念するために会社を退職した。当時、塾講師をしていた私も、『考えてみても仕方のないこと』と思い、親父が望むようにすることを支援するつもりでいた。母も父に従っていた。

 そして、父が最期の出勤となった日の夕方、手空きだった私は、突如、車で、最寄り駅前のデパートに乗り付けた。銀行に寄り、数万引き出したあと、デパート地下のワイン売り場に行った。その中でも高い酒は、空調設備がしっかりしたところに置かれている。

 実はそこには何度か行ったことがあるのだ。・・・入籍しても披露宴を挙げないという友人がいる中で、私は何かの集まりの時に、そこで、『ドンペリ』を買って持って行っていた。送ったこともある。デパートだからちゃんと箱まである。

 今回は、世話になった親父のためにと思って、『ドンピン』しかないだろうと、おそるおそる値札を見ると、四万円弱。・・・五秒迷った私は、箱を手にして会計を済ませた。決断したのだから後悔はない。包んでもらった後で、花屋に行き、本格的な花を作ってもらった(僕の財布の中身は空っぽだった)。私が帰宅し、花は母が買ったことにしようという中で、親父が帰宅。二人で「お疲れ様」と言った瞬間に、母が花を渡す。親父は少し照れたけれど、嬉しそうだった。親父が部屋に入り、着替えが済んだ後で、私は秘密兵器の『ドンピン』を出した。二人でグラスに注ぎ、『乾杯』となるも、酒好きの親父が余り飲まない。私は、『もったいないと思っているのかな?一口数千円の酒だしな』と勘ぐっていた。

 後日聞いた話によると、親父はシャンパンが大嫌いらしいのだ。それを聞いた私は倒れそうになった。何のために自腹で一番高い酒を買ってきたのかが解らなくなると同時に、親父のシャンパン嫌いを知らなかった私も迂闊だった。・・・幸い、お花の方は数日後に咲き、おかげさまで父は現在でも元気である。

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