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グレイハウンドバスの思い出 その2

 後ろから肩を叩いてきた、高校生ぐらいの白人はヨーロッパ(何処の国だか忘れた)から来た」と言った。そうして、「この国に来てろくなことがない。荷物は盗まれるし、最低だよ」みたいなことを言った。私は『(アメリカ人がたくさん乗っているバスの中で)こんなことを言うこいつは馬鹿だな』と思ったし、大体、旅先での荷物の管理は自己責任である。「そうか」とだけ言って、当時のテープ式のウオークマンをまた聞いていた。

 すると暫くして、また後ろから指でつつく。イヤホンを取り、振り返ると、「君はオウムシックにならないのかい?」と聞いてきた。最初、私は、当時の日本を震撼させた「オウム真理教」を思い浮かべた。『こいつは、俺がオウムの信者だと思っているのか?』と一瞬考えたが、そいつが何度も、「オウムシック」と言うので、ひらめいた。・・・そういえば昔、ヨーロッパのいくつかの国では、「ハヒフヘホ」の発音が下品だとして、「H」を発音しない国があると聞いたことがある。そうか、こいつは「Don't you feel homesick?」 つまり、「ホームシックにはならないのかい?」と聞いていることを飲み込んだ。私も孤独で寂しい思いは何回もしていたが、成田で飛行機に乗ったときに覚悟を決めていた。だから、「ならない」と強気で通した。そして、こんなアマちゃんじゃあ駄目だと、覚悟を引き締め直した。そして、窓に映る自分の顔を見つめた。音楽はバラードになっていた。

 すると、今度は右後ろからつつく感触がある。振り返ると、さっきの『Hotel Carlifornia』の白人だ。「俺、アラスカに行ってきたんだ」と言って、鞄から一枚の絵はがきを出して、僕の方に差し出してくれた。手にとってよく観ると、ほぼヌードに近い女性の背中が、氷の壁と一緒に映っていた。私が「ワァオ」と言って喜んだら、「あげるよ」と言ってくれた。お礼を言ってはしゃいだのだが、多分、彼はこの会話を聞いていたのだと思う。・・・祖国を誇りにしない人間など数少ないのだ。

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