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中村屋のおばあちゃん その2

 親父が、インベーダーゲームをやってはいけない」と言うのにも理由があった。無機的だし、それを取り巻く環境に巻き込まれることを危惧していたのだ。しかし、上手い人がやるのを、僕達兄弟はよく眺めていた。そんなある日、誰もいないことがあった。・・・やるなと言われればやってみたくなる。小学生の僕は、百円玉を入れてみたが、親父との約束を破った申し訳なさから、すぐに終わらせた。その度に『デーデデデ、デーデ、デーデデデデ』というショパンの「葬送行進曲」のサビが鳴っていた。弟にからかわれたが、わざと終わらせたのだ。

 そうして時代は、家庭用のTVゲーム機の時代を迎え出す。中村屋は改装して、裏をゲームセンターにしていた。・・・そんな中で親父が動く。X'masプレゼントにゲーム機を買ってくれたのだ。その日は家族みんなで盛り上がった記憶がある。親父は悪い仲間と付き合わせたくなかったのだ。私たち兄弟は、まもなく塾や習い事で忙しくなる中、ゲームを忘れてゆく。

 小学校も高学年になり、受験を控えた頃、ゲームも好きなTVも見られないくらい、毎日塾に通っていた時、あるニュースを聞いた。・・・近くの学校のPTAが、教育上良くないからと、中村屋のおばあちゃんに因縁を付けたのだ。この時、中村屋のおばあちゃんは、涙混じりで、平身低頭、「私たちはあれで食べていますから」と土下座したらしい。

 この歳になると、気持ちが痛いほどに解る。確かに悪い噂はあったが、一番の責任は親にあるんじゃないのか?老人をそこまで追い込む事に腹が立ったし、納得がいかない。それ以上攻めなかったと聞いたので、黙っていたが、おばあちゃんだってやりたくてやったわけではないのだ。・・・それを、寄ってたかって痛みつけるな。卑怯だ。

 おばあちゃんが、もし黄泉の人なら、お墓参りをしたい。

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