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アマデウス

 亡き親戚の寝たきりだったおじさんが、映画のアマデウスを観て、涙を流したと高校生の時に聞いた。おじさんはかなりの努力家だったらしいが、同時に天才願望も強かったらしい。おじさんは就職した後に階段で怪我をして寝たきりになってしまったのだ。当時の私には、おじさんの涙の理由が解らなかった。

 私が初めて映画の「アマデウス」を観たときには、ただ、「すげーな」というくらいの感想しか持てなかった。音楽に無知だったことと、私の精神年齢が幼かったせいだろう。それから十回以上観たが、最初は気楽に、モーツアルトがサリエリの自信やら何やらを木っ端微塵に打ち砕くのを、痛快な気分で観ていた。しかし、何回か観た後で、私はあることに気がついた。この映画の主役は、一見、モーツアルトのようだが、実はサリエリなのではないか?ということに。そうして私はサリエリの立場で映画を観る様にしてみた。すると、オープニングの精神病院からエンディングまで、見事につながるのである。同時に私は、どうしようもなく惨めな気持ちになった。人生を賭けた分野で、自分よりも才能に恵まれた男に、常に打ちのめされるサリエリが、まるで自分のことのようでもあり、自分の自信までもが壊される気分になった。映画の中で登場する牧師も、最後には打ちのめされている。自分の限界を知らされようで、可能性を否定されたようで、涙ぐんだ私はおじさんの気持ちが初めて解った。

 レクイエムを書かせることでモーツアルトを殺せると、オペラ「ドン・ジョバンニ」を観てサリエリが確信したということは、あの映画からは、モーツアルトが作曲について超現実的だった気がしてならない。つまり、冥界のイメージを正面から受け止めたが為に、レクイエムを書き進めるごとに死に近づいていったという印象だ。

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