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舞姫

 『舞姫』は森鴎外の作品であるが、何のために書かれたのかを考えるのは、結構、重要なのではないだろうか?

 森鴎外の自伝の面もある『舞姫』は、森鴎外がドイツに留学して、帰国する船の中での複雑な思いを語っている。ドイツに留学した森鴎外は、当初、留学先を様々に観察しながら、任務を遂行している。そんなある日、道で泣いている若い「舞姫」、踊り子のエリスと出会う。ドイツ語達者で、思いやりのある鴎外は、事情を聞く。そんな中で、世話をするうちにエリスと親しくなってゆき、エリスの母も含めて同居するようになる。貧しい中、若い鴎外は仕事をこなしながら次第にエリスに夢中になってゆく。・・・しばらくして、エリスの体調に異変が起きる。「つわり」が起き、鴎外の子を妊娠する。鴎外はエリスと暮らしていこうかとも考えるが、陸軍大臣の山県有朋が視察に来た際に、優秀なブレインとして認められる。鴎外の仲間も、鴎外に日本に帰るように説得する中、鴎外の胸中では、残るか帰るかの激しい葛藤を生じる。結果、エリスを見捨て、日本へと帰国する(その後裏切られたヱリスが日本まで来る)。

 何故、鴎外がこの作品を後世に残したのか・・・?私の推測では、自身の心の整理と共に、エリスへの愛情が本物であったことを確かめ、エリスへの懺悔の念と、自分の許せぬ行動への懺悔の念との確認が、この作品の底にあるような気がする。また、恋愛を通じて知った恐ろしい心の働きの世界への、覚悟のようなものがある。・・・自分を追いかけて日本に来たヱリスを、門前払いにせざるを得なかった際の、鴎外の心痛と覚悟までもが伺える。

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