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予告ホームラン

 昔、大学の研究室対抗ソフトボール大会の一回戦の数日前、引くに引かれぬ事情によって、私は先輩達の前で「予告ホームラン」をした。私はこれに名誉を賭けた。「もし打てなかったら、何と言ってもらっても結構です。でも、もし打てたら、今までのことは水に流してください」と言った記憶がある。確信など無かったが、ソフトボールなら何とかなるんじゃないかと、別段何の準備もしなかった。先輩達は面白がって、噂は研究室中に広がった。

 実際の試合の日、私自身もワクワクしながらグラウンドに足を運んだ。先輩達から「本当に来たぞ」などという言葉が飛び交う中、試合が始まった。ホームランを狙うなら、1番を打つ方が打席が廻ってくる分だけ、有利と言えば有利だが、どっちにしろワンチャンスだろうと考えていた私は何番でも良かった。ポジションもどこでも良く、結局、6番サードということになった。2回に1アウト一塁で打席が廻ってきたので、適当に素振りをしてから打席に入った。相手のピッチャーのタイミングをずっと確認していたこともあり、程よい緊張感の中で、打つことに集中していくことが出来ていた。先輩から「ホームランだぞ」などと声が掛かっても、「はい、わかりました」と答える余裕もあった。一球か二球、観た後、アウトコースの球を軽くミートしたら、ファーストとライトの間のファウルライン近くにスライスしながら打球が飛んでいる。走りながら、『入ってろ』と念じたボールはわずかにフェアで、グラウンドの遙か果てのフェンスまで転がっていってくれた。ボールが戻ってきた頃には、私は余裕でホームベースを踏んでいた。 試合には負けたが、口約は果たせた。桑田流に言うなら、ソフトボールの神様が打たせてくれた様なホームランだった。

 その後、研究室での先輩とのやりとりもうまくいくようになったのは言うまでもないが、危ない橋を渡るのはこれくらいにしておこうとも考えさせられた。

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