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死者の奢り

 死者の奢りを最初に呼んだときにはあまりピンとこなかった。その後、友人から「あれはゾッとする」とのアドバイスを受けても読まなかった。それから何年経つであろうか・・・あることで毎日悩んでいた私は、ひらめきに近い感覚で、「死者の奢り」を手にした。

 内容は割愛するが、一言で言って、妊婦のおなかのなかの胎児に、人生を生き抜いて、物となったホルマリン漬けの死者が、「生まれてくる価値のある物ではないよ、この世は」とささやいている気がしてならなかった。作中で妊婦は転ぶ。そしておなかを痛める。そんな中で人間の尊厳ような物を悟ったのか、堕ろすつもりだったけれど産む方向に気持ちが傾いてゆく。しかし、私にはその瞬間に、妊婦が流産しているように思えてならなかった。

 初期の大江健三郎氏の作品で鋭いと感じたのは「セブンティーン」も同じだ。人間の気持ちなんて振り子のようにあっという間に逆転してしまう。現に共産党員から民主党員に変わった人間を知っている。政治思想は特にこの現象が顕著だ。

 以前、友人から私の政治スタイルを質問されたことがある。その時に引用したのが芥川の「侏儒の言葉」の一節で「彼は左翼でも最左翼だと信じていた。だから左翼の人間でさえ敵に見えた」というシニカルな部分だ。自分としては現象を右からも左からも見る。その際、出来るだけニュートラルにしようとするのだが、それでは物事は進まない。現在ではニュートラルよりちょっとだけ右なくらいか・・・もちろん内容によっては左になることもあるが・・・。

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