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台湾紀行(その5)

 翌朝、チェックアウトをすませ、八時には駅に着いた。嘉義(かぎ)→阿里山(あーりーさん)の山岳列車の切符はどこで売っているのだろうと、キョロキョロしていたら、側のばあさんが話しかけてきた。どうやら、切符を買わないかと言っているらしい。私はかなりの確率でダフ屋だろうと思ったので、買わなかった。まもなく駅の切符売り場を見つけ、並んでいたら、自分の番がきたので、阿里山行きの切符が欲しい旨を伝えると、売り切れとのこと。私は焦ってさっきのばあさんを探し、話しかけた。するとばあさんは、大人用の切符は売り切れたからと、子供用の切符二枚を差し出した。通常料金である。私は、本当に、子供用の切符二枚で乗れるのか疑問に感じたが、それ以上に不思議だったのは、そのばあさんが何のために切符を買い占めているのか、ということだった。

 子供用の切符二枚でも、何とかなるだろうと思い、ホームで九時発の列車を待った。列車に乗る段になって、車掌に切符を見せても、何も言われない。安心して、昨日、見逃した景色を満喫すべく、窓側の席に座った。すぐに発車し、窓の外を眺め続けていた。頂上へと登り続ける景色は絶景であった。それにしても、よくこんなとこに線路を引いたな、というようなところが何カ所もあった。後で聞いたところによると、台湾には日本統治下の頃に作られた鉄道や山道といったインフラが多いとのこと。雄大な風景が広がり続ける中、木々や雲に時々遮られながら登ってゆく。まもなくスイッチバックの地点に着き、登り終えると阿里山の駅に着いた。やはり寒い。

 宿は離れているので、送迎バスがくるまで、茶店で過ごした。冷えた体を温めるために、フーフーとすすりながら飲んだ。時間になったので、店を出ると、丁度バスがやってきて宿まで連れて行ってもらった。昼過ぎ、天気は雨模様だったが、宿にいても仕方がないので、近隣の散策道を歩いた。森の中で、看板の地図頼りにルートを辿ると、途中には池などがあり、霞んだ空気の中、ある意味、幻想的な風景を私は楽しんだ。やがて宿に戻り、部屋でのんびりしていると、壁の張り紙に何か書いてある。山頂での朝日を見るために、朝の三時にモーニングコールを鳴らすとか・・・暴力的だ。やがて、夕食をすませ、部屋に戻ると、それまで雨だったのが嵐になっている。さすがに、ご来光を見るのは中止だろうと思ったが、翌朝三時に、本当にモーニングコールを鳴らしてきた。

 眠い目をこすり、宿からちょっと行ったところに、山岳鉄道の続きの駅がある。傘を持って、とぼとぼ歩き、ホームで煙草を吸っていると、ぞろぞろと眠たげな人たちがやってくる。頃合いに列車はやって来て、乗客を本当の頂上まで運ぶ。着いたら、雨風が強く、とても朝日など見えようはずはない。戻りたくても、帰りの列車の時間まで相当ある。ふと見渡すと、食べ物の屋台がたくさん出ている。・・・ここでの売り上げのために客を連れてくるのかと気が付いたが、あまりの寒さに、自分も温かそうなものを食べてしまった。・・・やられた。

 雨風の中、霧しか見えず、皆、列車で宿に戻った。寝直したかったが、間違いなく寝坊するだろう私は、朝一番の送迎バスで、阿里山駅に戻った。まだ人は少ない。山を降りる始発まで、まだ相当時間がある。駅の窓口も開いていない。仕方ないのでバス乗り場に行ってみた。すると母親と幼い三人の娘がいる。私はまた、手帳を取り出し、目茶苦茶な漢文でいろいろと聞いてみた。すると、娘さんから恐ろしい事実を聞いてしまった。なんでも、昨晩の嵐で、崖崩れが起こり、汽車は不通。バスも落石のために相当遅れている。復旧のめどが立たないとのこと。・・・私が愕然としたのは言うまでもない。

(つづく)

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