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胸ぐらを捕まれて

 中・高男子校だったせいか、我が校ではギャンブルが非常に盛んであった。中一の時に花札を友人から教わり、中三以降は麻雀が流行った。初めて徹夜で打ったのも、中三の時の友達の家でのことである。高校二年の時はトランプのブラックジャックとドボン、休みには馬券を買い、パチンコ屋で煙草を覚えた。学校をさぼっての、ボウリングでも、数字がある限り、なんでも博打の対象にしていた。さすがに高三の時には、受験生ということで、みんなやっていなかったが・・・。現在でもやるのは麻雀と競馬、気分転換のパチンコぐらいであろうか。それもこの頃は控えている。それぞれについて触れてもいいのだが、今日は高校二年の終わりの、ある出来事について触れる。

 やけにでかいカバンを持って登校した、土曜日の午前だけの授業が終わった後、友人二人と馬券を買いに行く予定だった。途中の駅で降りてデパートに向かうと、三人は男子トイレに向かい、そのやけにでかいカバンから私服を取り出し、速攻で学生服との着替えをすませた。髪型も、誰かが持ってきた整髪料で固められ、『変身』を済ますと、場外馬券売り場に向かった。三人が持ち寄った競馬新聞での検討が終わると、思い思いの馬券を買い、取った取らないになる。・・・今思うに、JRAの警備員に捕まるかもしれない。捕まったら補導→退学という中で、スリルと度胸試しの面が強かった気がする。

 その日は三人とも精彩が無く、オケラだった記憶がある。馬券売り場を後にした三人は、とぼとぼと歩き、どっかのゲームセンターに入っていった。金はなかったが、三人の中の一人が、「別のゲームセンターで取っておいたコインがある」と言い、店の奥のコインの販売機に手を入れ、「買った振り」をして次々とコインを取り出していた。そうして三人で遊ぼうかという段になったとき、怒鳴り声がした。

「おまえら、何やってんだ!今、別のコイン使ったろ。ふざけるんじゃねえ、どこの学校だ!」

 と言い終わるやいなや、「おまえか!」と別の友達の胸ぐらをつかんだ。するとそいつは、「いいえ、僕じゃありません」と即座に答えた。『次は俺だな』と思った私は後ろの真犯人である友人に目をやると、顔色が青白い。『あいつに行くまでに何とか俺で止めないと』と思った私の胸ぐらが捕まれた。「じゃあ、おまえか!」・・・来たなと思ったが、よくよく相手を観察してみると、私より若干背が低く、表情からは、無理矢理に腹を立てている感じだ。胸ぐらにも本気で力を込めていない。他の店員もいたが、大声を上げている、多分こいつが店長だろうと察した私は、アホになる事に決めた。何を言われても「はあ」としか答えず、相手の気合いをかわす作戦に出た。胸ぐらを揺さぶられても、「はあ」で通した。私のコンニャクみたいな態度に相手もそれ以上のことはしない。結果、何とか私で止めることが出来、ボロクソに言われながら、三人は店を出た。急場を凌いだ三人は、しばらく無言で駅に向かっていたが、突然一人が口を開いた。明るい口調で、

「あそこまで胸ぐら捕まれたなら、逆ギレして、相手の胸ぐらつかみ返してほしかったな」

 そう言ったのは、もちろん、即座に口を割ったやつである。『仲間売っといて何言ってやがる』と、開いた口がふさがらないのと同時に、そいつの要領の良さから出たであろう、多分苦しいハッタリに、怒る気にもなれなかったのである。

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