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ほったいもいじくるな

 大学院生の時の夏休み、私は生まれて初めての海外旅行で、独りでのアメリカ横断の旅を、アメリカに骨を埋める覚悟で決行した。西海岸から東海岸へと、移動手段はグレイハウンドのバスであった。泊まるところは、『地球の歩き方』というガイドブック任せで、行き当たりばったり。今考えると、かなりの暴挙であるが、その時寄った、ソルトレイクで私が行った実験を書こうかと思う。当時、何としゃべったか記憶にはないし、私の英語が無茶苦茶なのは勘弁していただきたい。

 ラスベガスからの夜行バスで、翌朝ソルトレイクに着いた私は、この間に時差があるのを、前もって調べていた。寝ぼけた頭で朝食を済ますと、泊まる予定のユースに向かって歩き出した。アメリカの街は碁盤の目になっているところが多いし、通りに名前があるので、地図さえあれば、土地勘が無くてもまず迷わない。迷ったら、そこら辺の人に聞けばいいだけの話だ。方角は太陽が教えてくれる。そこで、とりあえず、次にあった人に時間を聞いて、一時間時計の針をずらすための確認をすることにした。ここで私は、あるイタズラを思いついてしまったのである。

 この旅の遙か前に、ビートたけしのラジオの深夜放送で、「What time is it now?」と、当時売っていたアイスクリームの名前、「掘った芋いじくるな」との語音が似ているというネタで盛り上がり、私も爆笑した記憶があった。

 それを思い出してしまった私は、これが通じるか、是非試してみたくなって仕方無くなった。そうして、私はその日最初に出会う人には申し訳ないけれど、実験を試みることにした。しかし、早朝でなかなか人が見かけられない。・・・と、横の坂道から通勤に向かっているだろう、まだ若い男の人が歩いてきた。私はダッシュで駆け寄り話しかけた。

「Excuse me? I've arrived here Salt Lake City from Las Vegas by night bus this morning. I 'd heard it's different time zone between Nevada and Utah. So, would you tell me ほったいもいじくるな? (すいません。今朝、ラスベガスから夜行のバスでここ、ソルトレークにやってきました。ユタ州とネバダ州では異なる時間帯と聞いておりましたが、今、何時か教えていただけないでしょうか)」

それまで、ふんふんと聞いてくれていたその人は突如、

「What? (えっ?)」

と、驚きの表情で聞き返してきたのであるが、これは当然である。そこで、意地でも聞き出したくなった私は、時計を指差し、もう一度、

「ほったいもいじくるな?」

と、訊ねてみた。するとその人は、自分の時計を見て、

「Oh! It's 6:30.」

と教えてくれたのである!

「Thank you very much !」

といって別れ、時計の針を一時間ずらす私は、失礼ながら、大喜びしていた。申し訳なさは当然あったのだが、好奇心のほうが上回ってしまったのだ。お許しいただきたい。

 昔、ユタ出身のケント・デリカットが「ユタは田舎じゃないよ」と散々言っていたが、あれは嘘である。充分過ぎる程の田舎である。・・・というより、冬季オリンピックが開かれたように、素晴らしい自然があることを誇りに思ったほうが、楽しめるような所であった。

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